2013年1月9日水曜日

「予習・復習」の授業設計



http://www.shidaikyo.or.jp/riihe/research/arcadia/0498.html
「学校に於ける1時間の講義のことしか考えず、(学生の)自発的研究時間である後の2時間のことは全然念頭にない。したがって、1時間の講義をさらに2時間の学生の自発的活動で如何にして補わしめるための工夫、努力もなされず、またそのための新しい教授法の研究にもほとんど手がそめられていない。」(大學基準協会、1951、26頁一部、漢字を簡体字に改めた) 
日本私立大学協会 アルカディア学報 No.498「突き当った深層 大学改革は新しい段階に」 (客員研究員 金子元久 筑波大学大学研究センター教授)より



文部科学省が諸外国にならって定めているのですが,講義1時間に対し予習・復習を2時間することになっています。しかし日本の大学の実態としては形骸化していることが多いのではないでしょうか。その理由の1つに,引用した部分に書かれている「予習・復習=学生の自発的研究時間」を考慮した工夫をしていないということが挙げられます。

私は最近になってようやく「学生の自発的研究時間」の2時間のことを考えられるようになりました。でもそれは,研究や教育について経験を積んだこと,インストラクショナル・デザインを学んだこと,教育の実践と試行錯誤を繰り返したことによってようやく獲得できた技能のように思います。とても研究の片手間に1人で出来ることではないと私は考えます。

やはり,1人で研究と教育の両方をすべて考える現行の体制に無理があるように思います。諸外国で取り組まれているような,たとえば,研究の専門家と教育の専門家が手を携えて高等教育を形成していく,このような仕組みでないと抜本的な改善はできないのではないでしょうか。

さて,私が試みている「予習・復習の授業設計」について少しお話しします。ポイントは4つあります。

  1. 1回の授業で何を学ばせたいのか,学習目標を明確にする。
  2. 学習目標を達成させるために必要が学習課題を洗い出す,課題分析を行う。
  3. 課題を学習するための自習教材を準備する。
  4. 自習教材は,他人が作った教材を積極的に再利用する。どうしても必要な教材だけ自作する。

1〜3 については教材設計マニュアルに実践的な方法が詳細に書かれていますので,そちらを参照して実践と試行錯誤を繰り返してください。
4の教材の再利用は,とても重要なことですが,意外と難しいと個人的には思います。普段から教材についての情報収集を怠らないことも必要ですし,何より教材の良し悪しを短時間で見極める目が要求されます。教材の良し悪しを見極めるには,インストラクショナル・デザインに基づいて自分でいくつも教材を開発しないとなかなか身につかないと実感しています。

上記の1〜4ができるようになると,自ずと効果的な予習復習教材を準備できます。ここまでくれば,はやりの反転授業まで,あと一息です。

それで最初の主張に戻るのですが,やっぱり研究の片手間に教育はできないよね,と思います。教育の片手間に研究もできませんし。そういうわけで,私は一緒に研究と教育に取り組むパートナーを求めています。興味のある方は右下の MessageLeaf へどうぞ。